働いている人が親族を養っている場合に受けられる「扶養控除」。養う負担を考慮し、税負担が軽減される制度です。よく似た「配偶者控除」との違いや、児童手当と扶養控除の関係をやさしく説明します。
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1.扶養控除とは
養う親族がいる場合に受けられる所得控除のこと
扶養控除とは、養っている親族がいる人(納税者)が受けられる所得控除のことです。所得控除とは、所得からある決まった額を差し引いて、税金がかかる所得額を減らすことをいいます。
※「扶養控除」には親族を養う納税者が受けられる所得税上の控除と、収入が130万円未満の家族が納税者の社会保険(健康保険、厚生年金)に加入することができる社会保険上の控除があります。この記事では「所得税上の控除」について説明します。
扶養家族(親族)の対象の範囲
扶養控除の対象となる家族(親族)の条件は以下のとおりです。いずれか一つではなく、これらの条件すべてを満たす必要があります。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)、または里子、養護を委託された老人
- 納税者と同一生計である
- 年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合103万円以下)
- 青色申告の事業専従者としてその年一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
16歳未満は扶養控除がない?
かつては16歳未満の子どもも控除の対象となる扶養親族に含まれていましたが、2011年の子ども手当(当時)導入に際して廃止されました。そのため控除対象扶養親族は、上記の4条件を満たす16歳以上の人になっています。
扶養控除の金額(38万円〜63万円)
扶養親族の区分 | 年齢 | 納税者の控除額 |
---|
一般の控除対象扶養親族 | 16歳以上(以下の区分を除く) | 38万円 |
特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 |
老人扶養親族 | 70歳以上(同居老親) | 48万円(58万円) |
※年齢はその年の12月31日時点
※同居老親について、長期入院(1年以上)は同居として扱うが、老人ホームなどに入居している場合は別居とする
2.扶養控除とほかの控除・手当との違い
配偶者控除と扶養控除の違い
配偶者控除と扶養控除の違いは、納税者が養う身内が配偶者かそれ以外の親族かどうかです。また、配偶者控除は納税者の所得制限(1,000万円以下)がありますが、扶養控除は納税者の所得制限はありません。人数制限もないため、控除対象扶養親族がいればすべての該当者が対象となります。
いずれの控除も、養う対象の身内が給与収入のみであれば103万円以下(所得が48万円以下)がボーダーラインとなるため、配偶者控除も扶養控除も「103万円の壁」があるといえます。
配偶者控除について詳しくはこちらの記事で解説しています
>配偶者控除・配偶者特別控除とは? わかりやすく説明します
児童手当と扶養控除の関係
前述のとおり、2011年の子ども手当創設に伴い、それまでの年少扶養親族(16歳未満)の扶養控除が廃止されました。同時に、高校の学費実質無償化に伴い、16〜18歳の扶養控除に上乗せされていた25万円分も廃止されています。
そのため16〜18歳については38万円の扶養控除の対象となっていますが、2023年6月に提示された「次元の異なる少子化対策」素案によると、2024年度中に児童手当をこれまでの15歳以下から18歳以下(高校生まで)に拡充することが検討されています。児童手当の所得制限(所得が高いと児童手当がもらえないこと)は撤廃方針ですが、同時に18歳までの扶養控除廃止も検討されています。
もし廃止となると、18歳までの子どもに関する控除=税負担の軽減がなくなり、子育て期の負担軽減策が一律の児童手当に集中することになります。
児童手当の金額(月額)は3歳未満1万5,000円、3歳以上1万円(第3子以降は1万5,000円)となっており、仮に16〜18歳も一律1万円の場合、世帯年収によっては児童手当の額を扶養控除廃止による税金が上回り、負担増になる懸念が指摘されています。
3.扶養控除の申告方法
扶養控除を受けるには、年末調整か確定申告で申請する必要があります。
年末調整
会社員など給与の支払いを受けている人は、年末調整で「給与所得者の扶養控除等申告書」に必要事項を記入して勤務先に提出しましょう。同居していない親族などについては、添付書類が必要になる場合がありますので、国税庁のWebサイトや勤務先からの指示を確認してください。
▼年末調整について詳しくはこちらの記事で解説しています
>年末調整とは?
確定申告
個人事業主など会社での年末調整をおこなわない人は、確定申告で扶養控除を申請します。確定申告の第一表・第二表の扶養親族に関する欄に必要事項を記入し期限内に提出しましょう。扶養親族の本人確認書類などの添付は不要です。
▼確定申告について詳しくはこちらの記事で解説しています
>確定申告のやり方
4.扶養控除を活用して負担を減らそう
扶養控除は、養う親族がいる場合に納税者の税金の負担が軽くなる制度です。対象となる親族は16歳以上、該当する親戚の範囲は広いので、同一生計の親族がいる場合は扶養控除を申請できるか確認してみましょう。
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